施餓鬼会法要ご報告

7月7日に施餓鬼法要をおつとめし、36名のお参りをいただきました。
府中市では午後2時に最高気温36度という予報でしたので、朝から1階・2階のエアコンを全開にして、寺全体を冷やすように試みたものの、外気温とみなさんの熱気とで、結局かなりの暑さになってしまったのではと思います。
それでも、最後まで参列していただいたこと、誠にありがたいことと感謝申し上げます。

春のお彼岸では、法要前に口腔機能についての健康講話をしていただきましたが、今回はミニコンサートを初開催。シンガーソングライターの山口春奈さんに、ピアノとハープで弾き語りをしていただきました。

施餓鬼のご詠歌をピアノでアレンジしていただいたり、「七夕」や「ふるさと」といった唱歌、映画「千と千尋の神隠し」の主題歌「いつも何度でも」、亡き人とのつながりや祈りをテーマにしたオリジナル作品など、1時間弱にわたるコンサート、優しさと透明感あふれる歌声にみなさん、心癒されるひと時でした。

秋の彼岸法要は9月23日(月・振替休日)を予定しています。

適度な栄養と休養でこの夏を乗り切りましょう!

比べなくてもあなたはあなた

寺報『信友』234号の巻頭「比べなくてもあなたはあなた」を転載いたします。
―――――
毎年、年末にお送りしております浄土宗月訓カレンダー。5月の月訓は、標題の「比べなくてもあなたはあなた」でした。

浄土宗では『浄土宗新聞』という月刊新聞を出しておりまして、「今月のことば」というコラム欄があります。カレンダーの月訓にちなんだコラムが掲載されるのですが、そのお鉢が私にまわってきました。二十部ほど掲載紙が送られてきましたので、寺に置いております。お参りの際、ご自由にお持ちください。とはいえ、なかなか皆さんがお手に取るチャンスはないのも現実ですので、ここに転載いたします。
——
新緑が目に鮮やかな季節になりました。私はスギの花粉症なので、久々に新鮮な空気を思い切り吸い込めてうれしい毎日です。お檀家さんに会えば、「良い季節になりましたね」とあいさつを交わしています。

しかし、ふと考えてしまいます。本当に良い季節なのかしら、と。私にとっては良い季節でも、イネの花粉症の方にとってはピークを迎える悪い季節かもしれません。「良い」も「悪い」も人それぞれに異なるもの。「季節」はただ「季節」に過ぎず、私たちが勝手に個人的評価をつけているだけなのかもしれません。

私たち自身も勝手な評価をお互いにつけ合い、時にそれに苦しんでいると感じることが多々あります。職業柄、悩みの相談を受ける機会がありますが、そこで気づくのは評価されたり、比べられたりすることに疲れている方々がたくさんいるということ。この世界は小さいころから、成績という評価軸で他人と比べられる競争社会です。例えば95点をとっても、親からはほめてもらえずに、「なんでこの5点ができないんだ!」と叱られていたなんてお話をうかがったことがあります。その親にとっては「95点を取ったがんばった」子ではなく、「あと5点を取れなかった残念な」子になってしまい、本人もご自分をそう思うようになってしまったのだそうです。

家庭や学校では「良い子」や「普通の子」であることを求められ、ちょっと外れてしまうと「ダメな奴」「変な子」というレッテルを貼られてしまう。大人になっても同様で、いつまでも他者からの評価を気にする社会に生きなければなりません。疲れてしまうのも自然なことです。

浄土宗が拠り所とする経典『阿弥陀経』に、「青色青光(しょうしきしょうこう) 黄色黄光(おうしきおうこう) 赤色赤光(しゃくしきしゃっこう) 白色白光(びゃくしきびゃっこう)」という一節があります。これは極楽浄土では青い花は青い光を、黄色い花は黄色い光を放つという描写で、それぞれの花がそれぞれの光で輝く、その良さを示したものです。

阿弥陀さまの世界は、評価されることも比べられることもなく、みんながそのままでいて良い世界。現代社会はなかなかそうはいきませんが、阿弥陀さまはいつも、「あなたはあなたのままでいいんだよ」と語りかけてくれています。
——
いつも、信友では、あまり仏教的なことを書いていないので、お坊さんらしさを感じていただけたでしょうか?(笑)

街はアジサイが咲きだしてきました。青や紫、赤、いろいろな色で咲き誇り、うっとうしい梅雨時期の一服の清涼剤ですね。どんな色もきれいだなと阿弥陀さまの心で楽しみましょう。

浄土宗自死者追悼法要「倶会一処~ともに生き、ともに祈る~」

毎年6月10日に増上寺で開催しています、自死者追悼法要「倶会一処~ともに生き、ともに祈る~」の受付が始まったようです。
(住職もお手伝いにうかがう予定です)

以下のサイトからお申し込みください。

追悼法要「ともに祈る」のお知らせ (hatenablog.com)

★2024年度ともに祈る_ちらし

春の彼岸法要ご報告

温暖化のせいか、すっかり3月中に桜が満開になることに慣れてしまいましたが、今年は入学式に満開の桜を見られそうですね。

さて、3月23日に春の彼岸法要をおつとめいたしました。天候が定まらない時期でしたが、なんとか雨に降られずにホッと一安心。34名のお参りをいただきました。

今回は、健康講話と題して、ゲスト講師に東京都健康長寿医療センターの研究員であり、歯科医でもある枝広あや子先生をお迎えいたしました。ユーモアを交えながら、さらには仏教的要素も取り入れていただき、分かりやすく口腔機能についてお話いただきました。「講談師や落語家のようですね」という感想を複数の方からうかがいましたが、本当に流れるような名調子。今後も機会があれば、ご講義をお願いしたいと思います。

また、これまでは軽食としてカツサンドをお持ち帰りいただいていましたが、多磨駅の近くに開店した「ゴハンとオカズ。ときどき」というお店の店長さんとご縁ができたので、そちらにオニギリをお願いしてみました。8種類のオニギリをご用意し、お参りのみなさまには、2個ずつ選んでいただくという趣向。羽釜で炊いたご飯は美味でした。施餓鬼法要でもご用意する予定ですので、お楽しみに。

なお、施餓鬼法要は7月7日(日)を予定しています。講話ではなく、ちょっと素敵なミニコンサートを企画中。あらためてご案内いたします。

これから春本番となりますが、まだ昼夜の寒暖差がございます。くれぐれもご自愛ください。

春彼岸法要

恒例の春彼岸の法要は3月23日におつとめいたします。

13時から健康講話、14時から法要となります。

今回、講話をしてくださる先生は、枝広あや子さん。
東京都健康長寿医療センター研究所の歯科医師研究員、老年歯科認定医。浄土宗総合研究所や大正大学と共同で「読経で健康プロジェクト」を推進中。私はその過程で仲良くさせていただいております。

講話のテーマは「健やかなお口で幸せな食生活を!~いつまでも美味しく楽しく~」です。

お念仏が健康に良いというお話も聞けそうです。是非お楽しみに。

思わぬ効能

寺報『信友』233号の巻頭「思わぬ効能」を転載いたします。
―――――
1月1日に発生した能登半島の地震・津波は、正月気分を一気に吹き飛ばしました。信友のみなさんのなかにも、能登に親戚や友人がいらっしゃる方もおられるでしょう。心よりお見舞いを申し上げます。

震災のニュースに触れると、どうしても2011年の東日本大震災を思い出してしまいます。テレビや携帯電話から地震のアラームが鳴るやいなや、瞬時にして、あの時に戻されるような感覚。みなさんもおありではないでしょうか。それだけ私たちの心に深い痛みとして残っているのでしょう。

当時は連日のように死者が何名、行方不明が何名といったニュースが流れ、テレビ画面には嘆き悲しむ被災者が映し出されていました。そして、被災者のほとんどは、近しい誰かを亡くした遺族でもありました。

大震災の発生から少し経った頃、ある女性のお話をうかがう機会がありました。その方は、若い頃にご両親を自死で失うという悲痛な経験をされ、今は同じような経験をされた人たちを支える活動をしています。

テレビもラジオも新聞も震災報道一色だった頃、どう過ごしていたのかという話になりました。地震・津波でたくさんの人が亡くなったという報道は、被災地から遠く離れた場所にいても、遺族には無関係ではなく、胸がかき乱されるもの。自分が家族を亡くした時の記憶がよみがえったり、蓋をしていた感情が爆発しそうになったり……。

「ニュースは一切見れませんでした。でも、テレビやラジオをつけないと、孤独に押しつぶされそうになる。被害はだいたい分かっているから、ニュースを見なくても、いろいろ考えてしまって、落ち込んでしまうし……。」

では、どうやって乗り切ったのかと聞くと、こんな答えが待っていました。

「通販チャンネルってあるでしょう。24時間、365日、生放送で通販をしているところ。あれをずっとつけていたんです。震災のニュースはやらないし、暗い社会と無縁の世界。生放送だから、なんとなく同じ時間を過ごしている気分で、孤独感も和らぎました。」

全く想定外の答えに、目からうろこ。苦しさのなかで、もがき、たどり着いた逃げ道が、通販チャンネルだったのです。

たしかに、よく見ていると、通販チャンネルの人たちは、いつも明るく、前向きなことしか言いません。「赤のMサイズ、売りきれました!」とライブ感が伝わり、今、同じ時間を生きているんだ、自分は一人ぼっちじゃないんだと思わせてくます。

それ以来、私も孤独を感じたり、気持ちが上向かなかったりしたとき、通販チャンネルをボーッと眺めます。どんな夜中でもいつも笑顔で、フライパンで肉を焼いたり、スカートを履いたり、楽しそうです。(何も買ったことはありませんが)

これって、実はとても大事なことなのです。自分の心を知り、ダメだと感じた時にはしっかり守るということ。震災報道に疲れてしまった時に限りません。寂しさやしんどさにおそわれたら、だまされたと思って、通販チャンネルをつけてみてくださいね。