親父ゆずりの

11月に発行した寺報『信友』の巻頭「親父ゆずりの」を転載いたします。
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前号の『信友』をお送りしてから、関東地方は九月に台風一五号、十月に一九号と立て続けに襲われ、大きな被害を生み出しました。信友の皆さまのなかにも、大小問わず被害に遭われた方もいらっしゃることでしょう。お見舞いを申し上げます。

蓮宝寺では、昨年、皆さまのご協力のおかげで屋根を改修していたこともあり、大きな被害はございませんでした。ただ、府中市も一九号の際は多摩川沿岸には避難勧告が出され、胸がざわつく一日でした。

さて、災害が続き、暗いムードの日本を元気にさせてくれたのがラグビーでした。私もご多分に漏れず、にわかファンになって、テレビの前で歓声をあげていました。

実は、府中市には東芝とサントリーというラグビーの強豪チームがあり、市は「ラグビーの街・府中」をしきりにPRしているのです。日本代表キャプテンのリーチ・マイケル選手も市内在住のようで、私もショッピングモールで娘さんをあやしている姿を見たことがあります。

そんなこんなで、「素晴らしい闘いだった!」と人並みに興奮した私ですが、やってみたいとは全く思いません。痛そうだし、怪我をしたくないし、そもそももう若くないし……。それだけでなく、より根本的な理由は、チームプレーが苦手ということ。

日本代表チームのテーマがONE TEAM(ワンチーム)だったように、ラグビーは一致団結、みんなで力を合わせなくてはなりません。まさに、オール・フォー・ワン、ワン・フォー・オール(すべては一人のために、一人はすべてのために)です。

私はというと、小さい頃から集団行動が苦手。もともと運動神経が悪いので、運動全般が得意ではないのですが、サッカー、バレーボール、バスケットボール等々、チームで行うスポーツは全て苦手。小学校のドッチボールですら嫌でした。

自分の失敗がみんなに及ぶのも、他人の失敗が自分に及ぶのも嫌なのです。オール・フォー・ワン、ワン・フォー・オールの真逆の人間。

しかし、そこまで協調性がない人間とは私自身、思えません。運転免許の適正検査でも、まあまあの人格者らしき結果が出ますし、忖度や斟酌もよくします。

では、なんでチームプレーが嫌だったのだろうと思い起こしてみると、勝つことに興味がないことが原因だったのではと思えてきました。

みんなが勝利を目指して、頑張って、なかにはムキになって仲間にも激を飛ばしたり、しかりつけたりする人もいます。そんな中で、私は「別に命が取られるわけじゃないんだから」とか、「勝っても負けてもどっちでもいいじゃねえか」と全くヤル気が湧かないのです。

少年時代に夢中になって観ていたプロレスでも、猪木や馬場よりも、最後は負ける悪役レスラーに心惹かれるものがありましたから、勝者に魅力を感じないのかもしれません。そして、何より、みんなで一つの目標に進もうというのが、どうも気持ちが悪い。何か違うものの見方ができないものかと考えてしまうへそ曲がりなのです。

ここまで書いてきて、亡き父もそんなへそ曲がりだったなと思い出しました。偏屈といえば偏屈、大多数の意見には懐疑的、集団行動も好きではありませんでした。

それは少年時代に色々とつらい経験をしたことも影響しているでしょうし、軍国少年として育ち、突如それらが偽りだったと知ったことによる世の中への不信もあったと思います。しかし、多勢よりも無勢に、強者よりも弱者に心を寄せる人でもありました。

私のチームプレー嫌いと悪役レスラー好きは、どうやら父からの遺伝であったようです。

ラグビーの話から、どういうわけか父の話になってしまいましたが、『信友』執筆のおかげで、亡き父と触れ合えた心地です。

そういえば、間もなく四回目の命日。小学校から高校までバスケットボール部だった妻と墓参りに行ってきます。