4月の中旬から、2階部分の屋根の張替工事を行っておりました。
本堂の床が外側に向かって、やや傾斜をしていたり、客間の障子が開けにくくなったりしていて、大工さんに相談したところ、屋根瓦の重さが大きな原因と考えられるとのこと。
瓦はお寺らしさを出してくれますが、二階の屋根はあまり見えませんし、背に腹は代えられません。これを機に軽量の屋根に張り替えることにいたしました。
おかげさまで5月中旬に完了いたしました。
月別アーカイブ: 2018年6月
お寺はサービス業?
今年の5月に発行した寺報『信友』の巻頭「お寺はサービス業?」を転載いたします。
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春のお彼岸も過ぎた頃でしたか、後輩の僧侶二人と話をしていて、考えさせられたことがありました。
二人のうち、A君は浄土宗、B君は浄土真宗。いずれも山手線の内側にある、立派なお寺を預かる身です。
まず、A君。彼のお寺に墓所がある檀家さんが、「よそで葬儀をしてきたから、戒名をつけて、埋葬させてくれ」と言ってきたのだそうです。
それだけなら、突然の出来事に菩提寺に連絡を取る暇もなく、いわゆる直葬という形を取ってしまったのかもしれません。たまに耳にするお話です。
しかし、聞けば、その檀家さん、二回目なのです。以前にも、安く済ませたいからなのか、信仰心がないからのか、もうお骨にしてしまった後で、埋葬したいとお寺に連絡が。A君は、「お寺の墓地に埋葬できるのは、住職が戒名を授けて、引導を渡した方に限ります」と答えて、四十九日法要の際に戒名を授け、引導を渡して、納骨にたどり着きました。
僧侶側からすると、住職が日々、守っているお墓なのだから、ちゃんと信仰に基づく葬儀を行って埋葬してほしいと思うもの。つまり、一回目は救済措置だったわけです。
ところが、その檀家さんには真意は伝わらず、戒名も引導も埋葬に必要な手続き程度の認識だったのでしょう。二回目も全く悪びれることなく、唐突にお寺を訪ねてきたという次第。お骨の行方を思えばむげに断るわけにもいかず、信仰心は無いであろうその家族にどう理解してもらえばよいか、頭を抱えていました。
さらに悲しいことに、そのお家は古い檀家さんとのこと。世代を経る中で感覚が変わってしまったのでしょうか……。
続いてB君。ある日、墓参に来た家族の一人にこう尋ねられました。
「ここ、ジュースの自動販売機、無いんですか?」
B君が「無料のウォーターサーバーならありますが、自販機はありません」と答えると、その方は家族に向かって、「自販機も無いんだってよ」とあきれたように言ったそうです。B君は「あきれるのはこっちですよ」とぼやいていました。
幸い、私はそのような経験はまだありませんが、どうしてそういう事態が起こるのでしょう。A君もB君も真面目な僧侶です。怠けているからとは思えません。
一つには「お墓ありき」の問題がありそうです。檀家さんの側には、寺・僧侶と関係を築いているという意識が薄く、まず「お墓ありき」なので、住職を霊園の管理人程度に考えてしまっている節がある。だから、霊園の休憩所に自販機があるのは当たり前、「なんでこの寺にはないんだ?」と不満が生まれてしまうのでしょう。
それに加えて、意識がお墓で止まってしまうので、葬儀や法事の意味にも関心がわかないのかもしれません。意味が分からなければ、やる気も起きない、信仰のきっかけも作れないという悪循環です。
A君は「寺をサービス業と思っている人が増えている」と嘆きます。「管理費を出してるんだから、それに見合うサービスを」という感覚で「納骨させろ」と言ってくる。「寺は究極のサービス業」と言うことがありますが、それは人生での苦しい時、悲しい時に心と心を触れ合わせるという意味でのこと。お金の対価としてサービスを提供するサービス業とは一線を画すものです。(もちろん、サービス業に従事されている方は、対価以上の無形のサービスを提供しようと努力されていることは承知しておりますが。)
二人の話を聞きながら、蓮宝寺はお墓が無くて良かったと思いました。お墓が唯一の接点となれば、A君・B君のような問題がいずれ生じる可能性があります。蓮宝寺の場合、多くの信友のみなさんは多磨霊園に墓所があることがきっかけで蓮宝寺と縁を結ばれているとはいえ、私に嫌気が指したら、無理に付き合う必要はなくなります。こちらには、つなぎとめるすべがありません。これはこれで、とても怖い話ですので、なるべく考えたくはありませんが……。
それでは、蓮宝寺を成り立たせてきたのは何だったのだろうと考えますと、人と人、心と心の付き合いです。こんな財産があるでしょうか。墓地も境内も立派な伽藍もない寺ではありますが、大寺院に負けない無形の宝物があることに気付かされます。
究極のサービス業として、これからも信友のみなさまと心を通わせていきたいと肝に銘じた後輩との会話でした。
禁煙にご協力を
愛煙家の先代住職は客間での喫煙をOKしておりました。
先代の遺志を継いだわけでもありませんが、代替わりして以降、私も特に禁じてはおりませんでした。
しかし、社会意識の変化、また、客間に換気機能も備えておりませんので、今後は建物内での喫煙をご遠慮いただきたくお願いを申し上げます。
玄関先や駐車場での喫煙を妨げるものではございませんが、吸い殻はお持ち帰りくださいませ。